最近入手した宝石 ― その15

71) Painite ペイナイト ミャンマー産 1.163ct 暗赤色透明石

和名:ペイナイト(ペイン石)化学組成:CaZrBAl9O18 六方晶系に属する。
産状:卓状結晶 色相:暗赤色、橙赤色、透明石 光沢:ガラス光沢
モース硬度:7.5-8 比重:4.01  屈折率:ω=1.816 ε=1.787
複屈折量:-0.029 多色性:二色性強 蛍光:長波・短波共に赤色
産地:ミヤンマー

この石は、1952年にミャンマーのモーゴクの宝石鉱物を含む漂砂鉱床の中から最初に発見された。1957年に新種の鉱物であることがわかり発見者であるイギリスの宝石商のA.C.D.Pain氏に因んで命名された。知られている原石としてはイギリスの大英博物館が所蔵する1.7Kgの原石があり、世界唯一のものでカット石は大変稀少である。色は濃いレッド・ガーネットに似ている。

72) Sellaite セラアイト ブラジル産 0.398ct 無色透明石

和名:セラアイト(セラ石) 化学組成:MgF2 正方晶系に属する。産状:柱状結晶、繊維状集合体 色相:無色、白色、透明石 光沢:ガラス光沢 モース硬度:5 ヘキ開:{010}、{110}完全 比重:3.15 屈折率:ω=1.378 ε=1.390 複屈折量:+0.012 蛍光:長波にて紫色短波にて変化なし 産地:ドイツ、イタリア、フランス、ブラジル・・・等

マグネシウムを含んだ弗化物である。中に入っているインクルージョンの影響で黄色味を帯びているように見える。氷河期の堆積物の中に流黄、蛍石、石英等と共存、カリ岩塩鉱床、石灰岩、火山噴出物などの中から産出する。又大理石の空洞中より5cmまでの微細結晶としても産出。イタリアの鉱物学者Q.Sellaに因んで命名された。

73) Thorianite トリアナイト アメリカ産 0.299ct 黒色不透明石

和名:トリアン石(方トリウム石) 化学組成:ThO2 等軸晶系に属する。産状:立方体結晶 色相:褐黄色、黄色、緑色、褐黒色?暗褐色、透明から不透明石光沢:ガラス、樹脂光沢 モース硬度:6.5-7 ヘキ開:{001}弱
比重:9.99 屈折率:α=2.39 β=2.42 γ=2.52 複屈折量:+0.13 
蛍光性:長波短波共に変化なし 産地:アメリカ、カナダ、南アフリカ、スリランカ、マダガスカル・・等

放射線元素であるトリウムが主な成分であり、放射能を発している。ペグマタイト中とカーボナタイトの中から産出する。閃ウラン鉱よりも稀少であり、閃ウラン鉱のウラニウムがトリウムによって置換されウラニウムよりトリウムの含有が多いものをトリアナイトと呼び、セリウムが多いものはセリアナイトとよぶ。中間的な化学組成を持つ物(Uranothorianite)も多い。

74) Willemite ウィレマイト アメリカ産 0.222ct 黄色透明石


和名:珪酸亜鉛鉱 化学組成:Zn2SiO4 三方晶系に属する。
産状:塊状、粒状、時に柱状結晶 色相:無色、緑色、黄色、白色、褐色、赤色、透明から半透明石 光沢:ガラス光沢から樹脂光沢 
モース硬度:5.5 ヘキ開:一方向に明瞭 比重:3.89-4.10
屈折率:ω=1.719 ε=1.691複屈折量:+0.028 多色性:二色性 
蛍光:長波・短波共に黄色 分光:421nmに強いライン、583,540,490nmに弱いライン産地:アメリカ、カナダ、メキシコ、ロシア、ナミビア・・・等

名の通り、亜鉛と珪酸からなる鉱物である。市場に出回っている透明石はアメリカのニュージャージー州のフランクリン鉱山からの物がほとんどで1?2ctのサイズが多い。日本でも採れるが、ごく小さいものしか採れない。紫外線をあてると強烈な黄緑色の蛍光を発する。Mnを含有する場合には黄色の蛍光を発する(成分分析の結果Mnの含有が確認された)。蛍光灯には合成珪酸亜鉛鉱などが蛍光物質として使われている。名称はオランダの王ウィレム一世に因んで命名された。

75) Williamsite ウィリアムサイト アメリカ産 0.228ct 緑色透明石


和名:ウィリアムサイト 化学組成:(Mg,Fe)3Si2O5(OH)4 単斜晶系に属する。産状:塊状、繊維状 色相:緑色透明石 光沢:樹脂光沢 
モース硬度:4 ヘキ開:時に明瞭 比重:2.4-2.8 屈折率:1.560-1.571 蛍光:長波にて微緑色 短波にて変化なし 産地:アメリカ・・・等

蛇紋岩(Serpentine)の一種である。蛇紋岩にはウィリアムサイト、ボーウェナイト、リコナイト等の多くの宝石になる変種がある。ヒスイに似ている緑色を示し、中には内包物として黒色のクロマイト・インクルージョンが混在している。             

 

上段左から
Willemite, Williamsite

下段左から
Painite, Sellaite, Thorianite

 

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ジェム・インフォメーション 第33・34合併号発行 2006年8月28日

目次

(1)アメリカコロラド州スイートホーム鉱山産透明ロードクロサイト
    1)ロードクロサイト(Rhodochrosite)とは…
    2)コロラド州スイートホーム(Sweet Home)鉱山の歴史と品質
    3)スイートホーム鉱山の場所と地形
    4)新しい採掘方法とカット技術の進歩
    5)類似石と類質同像
    6)ロードクロサイトの市場と取り扱い方法

(2)A.G.LがGIAのカットグレーディングシステム導入
    1)GIAカットグレーディングシステムに於ける品質の3要素
    2)数値化によって表示される検査項目
    3)目視評価項目
    4)ペインティングとディギングアウト
    5) A.G.Lと GIAのカットグレーディングシステムの比較
    6)ハート&キューピットとクロマティックフレア

(3)コロンビア・チボール鉱山産 ユークレース(Euclase)

(4)コロンビア産の珍しいコランダム

(5)ノルウェー産ペリドット(Peridot)

(6)ブラジル産出の宝石ブラジリアナイト(Brazillianite)について

(7)トルコ石(Turquoise)の加工方法について

(8)パライバ色をしたギラライト入りクォーツ

宝石の世界 “ロードクロサイト”

ロ ー ド ク ロ サ イ ト   Rhodochrosite  “新しい宝石文化の誕生” アメリカ コロラド州スイートホーム鉱山産 透明ロードクロサイト   1) ロードクロサイト(Rhodochrosite)とは・・・    2) コロラド州スイートホーム(Sweet Home)鉱山の歴史と品質  3) スイートホーム鉱山の場所と地形    4) 新しい採掘方法とカット技術の進歩    5) 類似石と類質同像  6) ロードクロサイトの市場と取り扱い方法  7) 種々の分析データ 

 濃淡のピンク色に白い縞の入ったベーコンの様な外観から、ベーコンストリップとも呼ばれる縞目を持つロードクロサイトは、一般的には不透明な塊状の宝石で、彫刻品や置物などにインカローズ(inca-rose)と呼ばれて長い間使用されてきた。そのうちごく一部の良質なものは丸球等に加工され、ネックレスなどの装身具として欧米では利用されている。 和名で菱マンガン鉱と呼ばれるように、菱面体形状を示す美しい結晶形として産出する透明石が、年に数える程ではあるが発見されてきた。ロードクロサイトはモース硬度が3.5?4とほとんどの宝石より低いが(例 / オパール:モース硬度5.5?6.5)、ジュエリーとしてずっと使用されている真珠(モース硬度:2.5?4.5)よりも硬度が高い点に着目して、新しい技術で採掘され、新しい技術で磨かれ、ここに初めてエッジがシャープな新しい宝石として誕生した。            アメリカコロラド州の4000m以上の高地で、鉱山に入れるのは年に数ヶ月だけという厳しい地形にもかかわらずスイートホーム(Sweet Home)鉱山がアメリカ人によって採掘され、今日本に輸入され始めている。 スイートホーム鉱山の場所と地形 スイートホーム鉱山はコロラド州アルマの北西約6kmの険しいモスキート山脈に位置し、デンバーから南西に128kmの所にある。北はブロス山の中腹にある銀鉱山、南は金の鉱山という2つの主要な採掘地区の中間に存在する。スイートホーム周辺の地形は険しく、高さが4,267mもある山頂が幾つか鉱山を囲んでいて、冬には6m近い豪雪に見舞われ、鉱山に行けるのは1年に2?3カ月しかないという。採掘は通常、雪がなくなる5月下旬頃から開始され、実際に雪がなくなるのは、7月半ばから8月半ばだけだという。 新しい採掘方法とカット技術の進歩 4000m以上の高地で、先カンブリア紀の花崗岩や花崗岩質片麻岩の大変硬い母岩の中に、モース硬度3.5?4と非常に柔らかく、さらに3方向に完全なクリベージを持つロードクロサイトの結晶が入っているために、どのようにそれらを見つけ出し、破壊することなく美しく取り出すかという難題をクリアするためにスイートホーム・ロード社の地質学者達による広範囲な地質地図の作成と調査が行われた。その結果、主要なロードクロサイトの鉱脈が“通常北東にのびる主要な鉱石鉱脈が、断層系と交差する場所に生じる”という理論が成立した。数年後、これらの場所がロードクロサイトのポケットであることが判明した。今までのロードクロサイトの採掘方法や、他の宝石の一般的な採掘方法は、鉱脈近くにドリルで穴を開け、そこにダイナマイトを入れて爆破し、破壊した母岩の中から結晶系を探しだす為、爆破の時点で結晶が割れたり崩れたりしてしまい、完全なものや大きなものは採掘できなかった。 又カット方法も今までの方法では原石のクリーニングに時間をかけず、ただ周囲に付いたほこりや小さな粉末を水で洗い流すだけで、研磨版の材料、研磨の速度、研磨材、ポリシング材…などの研究もさほどなされなかった。 しかし、このグループは硬度の低いロードクロサイトの結晶を取り出すために、チェーンソーを用いて周囲の母岩ごと掘り出すことに成功した。取り出された結晶は5時間ないし10時間のクリーニングを徹底的に行った。粉塵がわずかについているだけで、研磨の際にキズをつけたり、しいては割れにもつながってしまうからである。さらに研磨板の回転速度、摩擦熱を上げないための研究、トップに石をつける接着剤の研究がなされ、徹底した研磨室のクリーン化がはかられた。採掘、研磨の工程で様々な改善がなされたことで、ここのSweet Home鉱山産のロードクロサイトにカット面のエッジがカミソリの刃のようなシャープな宝石が完成したのである。 1992年以降、0.5ct以上の大粒のカット石は、年間100個程度しか生産されていないという数字を見ても、世界中のディーラーの取り合いは必至で、日本に入ってくる数に限りがあることは容易に想像がつく。

最近入手した宝石 ― その14

66) Star?Ekanite スター?エカナイト(四条スター)

スリランカ産 58.156ct 暗緑色半透明石
和名:エカナイト 化学組成:ThCa2Si8O20 正方晶系に属する。
産状:長柱状結晶、塊状、礫状 色相:緑色、暗褐色、透明から半透明石光沢:ガラス光沢 モース硬度:5-6 ヘキ開:なし 比重:3.28-3.32  屈折率:1.57(スポット法) メタミクト化により変化あり 多色性:検査不可 蛍光:長波・短波共に変化なし 産地:スリランカ、カナダ

エカナイトは最も稀少な宝石の一つである。放射能物質であるウランとトリウムを含み、そのためにメタミクト化(鉱物内で放射性原子により結晶格子が崩壊して非晶質になること)する鉱物である。1953年スリランカのラトナプラ鉱区の砂礫層から新鉱物として発見される。名称は最初の発見者であるスリランカのF.L.D.Ekanayakeに因み命名された。スリランカのラトナプラ鉱区から産出したスター?エカナイトは通常弱い四条のスターを示し、このアステリズムはごく細かい針状インクルージョンの粗密な繰り返しによるものである。

67) Demantoid?Garnet?cat’s-eye デマントイド・ガーネット・キャッツ・アイ

ロシア産 1.591ct 緑色半透明石和名:翠柘榴石 
化学組成:Ca3Fe2(SiO4)3 等軸晶系に属する。産状:十二面体結晶、破片状、粒状 色相:緑色透明から半透明石 光沢:ガラス光沢 モース硬度:6.5-7 ヘキ開:なし 比重:3.82-3.85  屈折率:1.88 多色性:なし 蛍光:長波・短波共に変化なし 産地:ロシア、イタリア・・・等

アンドラダイト・ガーネットの中のクロムを含有している緑色の石のことである。内包物としてホーステール?インクルージョンが入っているのが特徴である。分散度が高いことからグリーン・ダイアモンドとも呼ばれた時もあった。名称はフィンランドの鉱物学者Nils von Nordensheld氏により1878年にデマントイド(ダイアモンドに似ているというオランダ語)として命名された。この石のシャトヤンシーの効果はホーステール?インクルージョンが一定方向に規則正しく配列したことから生じた物である。このホーステール?インクルージョンはクリソタイルであると報告されている。

68) Scapolite?cat’s-eyeスカポライト?キャッツ?アイ

Star?Scapolite スター?スカポライト
写真は左より ミャンマー産 5.533ct 淡青色半透明石(キャッツ?アイ)
ミャンマー産 4.161ct ピンク色半透明石(キャッツ?アイ)
スリランカ産 1.332ct 暗褐色半透明石(六条スター)

和名:スカポライト(柱石)化学組成:Meionite(灰柱石)3CaAl2Si2O8?CaCO3,Marialite(曹柱石)3NaAlSi3O8?NaCl 正方晶系に属する。産状:短柱状、塊状、粒状 色相:無色、黄色、ピンク色、紫色, 透明から半透明石
光沢:ガラス光沢 モース硬度:5-6.5 ヘキ開:完全 比重:2.57-2.74 屈折率:1.54-1.56(スポット法) 蛍光性:淡青色半透明石(長波にて黄緑色、短波にてピンク)淡ピンク色透明石(長波にてオレンジ色、短波にて淡いピンク色)暗褐色(長波にて変化なし、短波にて赤色) 産地:タンザニア、ミヤンマー、ブラジル、スリランカ・・・等

カルシウムを主成分とするMeionite(メイオナイト)とナトリウムを主成分とするMarialite(マリアライト)の固溶体である。このカルシウムとナトリウムの含有率により色の変化が現れる。淡青色半透明石(キャッツ?アイ)と淡紫ピンク色半透明石(キャッツ?アイ)は様々なチューブインクルージョンが原因でシャトヤンシーを示している。暗褐色半透明石(六条スター)は白いクラウド状に見えるごく小さくて細かい針状のインクルージョンから六条スターを生じる。
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69) Star?Chrysoberyl スター・クリソベリル(四条スター)


スリランカ産 8.026ct 濃黄緑色半透明石和名:金緑石 化学組成:BeAl2O4 斜方晶系に属する。産状:柱状結晶、双晶、三連晶、礫状 色相:黄色、帯緑黄色、帯黄緑色、緑色、褐色透明から半透明石 光沢:ガラス光沢 モース硬度:8.5 ヘキ開:一方向に明瞭ないし不明瞭 比重:3.68-3.73  屈折率:1.74(スポット法) 多色性:検査不可 蛍光:長波・短波共に変化なし 産地:ブラジル、スリランカ・・・等

クリソベリルにはアレキサンドライトとキャッツアイの2種類の宝石がある。クリソベリル?キャッツアイは針状インクルージョンの平行状配列によるものである。今回の四条スターを示す物はごく稀少である。オーバルカボションカットの長い方向の強いシャトヤンシーとこれより弱いシャトヤンシーが交差して斜めに示す。

70) Topaz?cat’s-eye トパーズ?キャッツ?アイ


スリランカ産 9.305ct 無色透明石?和名:黄玉 化学組成:Al2SiO4(F,OH)2 斜方晶系にする。産状:柱状結晶、塊状、卓上、礫状 色相:無色、青色、黄色、褐色、淡緑青色透明石 光沢:ガラス光沢 モース硬度:8 ヘキ開:底面に平行な一方向に完全 比重:3.53-3.56 屈折率:1.61(スポット法) 蛍光:長波・短波共になし 産地:ブラジル、ビルマ、ナミビア、スリランカ、パキスタン・・・等

トパーズは水酸基〔Al2SiO4(OH)2〕とフッ素基(Al2SiO4F2)のOH-タイプとF-タイプに分けられる。ホワイトトパーズはF-タイプである。無色のホワイトト?パーズのほとんどは照射によりブルーに変えられている。今回のシャトヤンシーを示すトパーズは極めて稀である。細くて長い針状インクルージョンの影響である。

ジェム・インフォメーション 第32号発行  2006年1月30日

目次

1)ブラジル訪問記
  (1)パライバ・トルマリンの現状
     a)パライバ州 バタリア視察
     b)リオ・グランデ・ドゥ・ノルチ州視察
     c)宝石のメッカ ゴベナドール・バラダレス訪問
     d)まとめ
  (2)ブラジル宝石鉱山の現状
     a)最高級アレキサンドライトの産地ヘマチタ(Hematita)
     b)ピティラス(Piteiras)のエメラルド鉱山
     c)新しく採掘を始めたホシャ(Rocha)の鉱山
     d)まぼろしのアクアマリン サンタ・マリア・ジ・イタビラ
      (Santa Maria de Itabira)
2)スリランカ訪問記
     a)Gemmological Institute of Colombo(コロンボ宝石学協会)設立
     b)スリランカの新しい宝石産地 オッカンペティア“Okkampitia”
     c)近代的な工場
     d)スリランカ最大の宝石フェアー“Facets 2005”
3)グリーンド・アメシストとグリーン・クォーツ
4)2006年の宝石の色“黄色”
5)最近入手した宝石―その14
    66) Star?Ekanite 67) Demantoid?Garnet?cat’s-eye
    68) Scapolite?cat’s-eye、 Star?Scapolite  
    69) Star?Chrysoberyl 70) Topaz?cat’s-eye

宝石の世界 デマントイド・ガーネット発行

デマントイド・ガーネット Demantoid Garnet

100年の眠りから覚めた伝説の宝石

1853年頃、ロシアの中央ウラル山脈にあるElizavetinskoye村で、輝きの強い濃いグリーンの宝石が発見された。それはダイアモンドのような美しい輝きがあったため、デマントイド(Demantoid)つまり“ダイアモンド(オランダ語でDemant)に似た”という名前が付けられた。その後、そこから南へおよそ160kmのSissertsk地域からも採取されている。
デマントイド・ガーネットは、1875年頃から1917年のロシア革命によりロマノフ王朝が崩壊するまで、ロシアの宮廷ジュエリーとしてもてはやされ、皇族や貴族の身につける宝飾品を彩った。
特に、ロシア皇帝お抱えの宝石商Karl Fabergeによって製作されたものは有名である。ロシア革命後は採掘が途絶え、ごく最近までアンティークジュエリーの中に時々見かけるだけの“幻の宝石”になってしまった。
しかし、2002年にSissertsk地域Kladovkaの再開発がはじまり、その昔ロシア皇帝や貴族達しか持つことを許されなかったという希少価値から、いまウラル産のデマントイド・ガーネットが、大変注目を集めている。また、ウラル産デマントイド・ガーネットに見られるインクルージョンは、馬の尻尾のように見える事から“ホーステール・インクルージョン”と呼ばれ、馬を愛するヨーロッパの貴族階級の間で“幸運の象徴”として古くから大変珍重されている。
以下・・・?ガーネットの種類
     ?デマントイド・ガーネットとは
     ?特有のホーステール・インクルージョン
     ?ロシア産デマントイド・ガーネット
     ?その他のデマントイド・ガーネットの産地
     ?さらなる100年後にロマンを託して

モザンビーク産パライバカラー・トルマリン

☆☆☆ Gem News ☆☆
日独宝石研究所 2005.10.3

今年の5月頃より、アフリカ モザンビークのAlto Ligonhaのジャングルの中で新しいパライバカラーのトルマリンが発見され、最近市場に出回っている。ドイツのイーダー・オーバーシュタイン市にも、いち早く原石が持ち込まれ、すでに数社が取り扱っているとの事である。
当研究所にも7月末に顧問のバンク博士より30ピースのカット石が送られてきた。サイズは0.7?48 ctで、驚いた事に今までに見た事が無い色相であった。パステル調のバイオレット、ピンク、ブルー、グリーン、それに緑青色で輝きが強く、まさにエレクトリックの美しい色をしていた。従来のパライバ・トルマリンと比べて、特にサイズが大きく、インクルージョンも少ないのが特徴である。聞くところによると、ブルーの2石以外は全て非加熱で、カット・研磨以外何もされていないとの事であった。
早速30石全てに可能な限りの検査をした。蛍光X線成分分析装置(EDXRF)で検査した結果、30石全てに銅(Cu)やマンガン(Mn)の含有が認められ、通常の鉄(Fe)トルマリンとは完全に違っていた。銅含有のエルバイト・トルマリンであり、今まで発見されているブラジルのパライバ州やアフリカのナイジェリア産のトルマリンに大変良く似ている事が判明した。
知人の話によれば、これらモザンビーク産のトルマリンは、8月にブラジル人が2.7kgと3.2kgの原石をバンコク市内で購入してブラジルに持って行き、また直接モザンビークにも行って捜し求めているとの事である。原石の価格が高騰して地元の人たちは買う事ができないとの事だ。
ブラジルやドイツに入った原石は、すでにカットされ、最高の品質に仕上げられて日本市場に出回っていると考えられる。パステル調の美しい色合いで、インクルージョンも少なく、非加熱の美しさを楽しめる石である。正しい情報開示がもとめられる。

グリーン・クォーツとグリーンド・アメシスト

☆☆☆ Gem News ☆☆
日独宝石研究所 2005.09.28

最近急激なスピードで日本の宝石業者が取り扱い始めているアイテムの中に、16×12mmや18×13mm等の大きなサイズのグリーン・クォーツがある。しかも驚いた事に、1カラット単価が数ドルの安さで取り引きされているという。どういうことだろうかと疑問を抱き、当研究所顧問のドイツ宝石学協会のバンク博士に問い合わせてみたところ、30年前に流通したといわれる加熱前の原石と加熱後の原石、それにカットされたグリーンド・アメシストが送られてきた。
グリーンド・アメシストというのは、1954年にブラジルのミナス・ジェライス州のモンテズマ鉱山で発見されたアメシストを約650℃で加熱する事により、美しいパステル調の透明グリーン・クォーツに変化させたものである。モンテズマ鉱山のアメシストは天然の照射を浴びているために、加熱されることにより鉄の二価が一価に還元されるために、この色の変化が起こる。アメシストがグリーンに変わったという意味で、グリーンド・アメシストと名づけられ、以前から高価な希少石として、ペリディーン(Peridine=ペリドートとシトリンの合成語)やプラシオライト(Prasiolite)の別名で取り引きされてきた。
しかし、最近流通している大きなグリーン・クォーツを鑑別してみると、完全にそれらとは違っている事に気が付いた。最近の石はカラー・フィルターで赤味があり、特に大きく濃色の石ほど赤味が強い。紫外可視分光光度計で測定したところ、610?620nmに吸収が現われ、昔のグリーンド・アメシストとは完全に違っていることが判明した。
9月27日の宝石鑑別団体協議会(A.G.L)の色石委員会で取り上げられ、これらは照射により色が変わっているために、開示コメントは“色の変化を目的とした人為的な照射処理が行われています。”を記載する事になった。また、“グリーンド・アメシストと呼ばれています”という一文は、この石には使用しないことに決定された。

ジェム・インフォメーション第30・31合併号発行 2005年8月8日

日独宝石研究所創立10周年記念特集号

1)Prof. Dr. Dr. h. c. Eduard Josef Gübelin
2)鉛ガラス含浸ルビーの現状と今後
3)ダイアモンドに宿るHeart & Arrow
4)ツーソン ジェム&ミネラルショー訪問記?2005
   ? アメリカ ネバダ州産プレシャス・オパール
   ? 鮮やかなグリーンを湛えたヒデナイト登場
   ? アメリカ産トルコ石の産地と特徴
   ? 人造金入り銀入り水晶
   ? 紫色に目を奪われたTiffany Jasperとは
   ? ケニア産グリーン・アイドクレーズ(鉱物名 ベスビアナイト)
   ? カラーチェンジタイプのアンデシン
   ? ナイジェリア産のブルー・サファイア
   ? Malawiのブルーとイエロー・サファイア
   ? スター・トラピッチェ・サファイア
   ? 良質なブラジル産エメラルド Belmont とNova Era
   ? トルコ産バイオレット・ジェード?
   ? カンボジア産のスターライト(スカイブルー・ジルコン)
5)最近入手した宝石―その13
     61) Hornblende 62) Kovdorskite 63) Lepidolite  
     64) Remondite 65) Stolzite

最近入手した宝石 ? その13

61) Hornblende ホルンブレンド:スリランカ産 0.430ct 褐色透明石

和名:普通角閃石 化学組成:Ca2(Mg,Fe)4AlSi7AlO22(OH)2 単斜晶系に属する。 産状:断面は六角形や菱面体、繊維状や粒状の結晶??? 色相:無色、白色、灰色、ピンク色、淡い緑色、褐色透明石、モース硬度:5-6???? へき開:完全? ?比重:2.98-3.24 ? 屈折率:α=1.675 β=1.690 γ=1.695?? 複屈折量:-0,020?? 蛍光検査:長波・短波共に変化なし 多色性:三色性
角閃石族は100種類近くの仲間があり、これらを全てまとめてアンフィボール族と呼んでいる。その中で一番ポピュラーなのがケイ酸塩鉱物の普通角閃石である。同じ普通角閃石でも成分はマグネシウム,カルシウム,アルカリなどを含む複雑な化学組成をもっている。Fe?>Mgはフェロホルンブレンド(Ferrohornblende)になり、Mg>Fe?はマグネシオホルンブレンド(Magnesiohornblende)になる。 

62) Kovdorskite コブドルスカイト:ロシア産 0.585ct 淡オレンジ色透明石

和名:コブドルスカイト? ?化学組成:Mg5(PO4)(CO3)(OH)2?4.5H2O?? 単斜晶系に属する。? 産状:粒状結晶? ?色相:淡いバラ色、青緑色 モース硬度:4?? へき開:なし?? 比重:2.60?? 屈折率:α=1.527 β=1.542 γ=1.549?? 複屈折量:-0.022?? 多色性:三色性?? 蛍光性:長波・短波共に変化なし 産地:ロシア
Murmanskaja州ロシアのKola半島のZheleznyy鉱山のコブドル断層のマグネシウムカンラン石-フォルステライトの岩石中にマグネサイト、ドロマイトなどと関連して産出する。

63) Lepidolite  レピドライト:ブラジル産 1.610ct ピンク色半透明石 


和名:リチア雲母?? 化学組成:K(Li,Al)(Si,Al)O10(F,OH)2? 単斜晶系に属する。? 産状:板状結晶? 擬六角形あるいは六角形  色相:桃色、オレンジ、無色、白色、灰色透明?半透明?? 光沢:真珠光沢?? モース硬度:2.5-3?? へき開:{100}に完全? 比重:2.8-3.3? ?屈折率:α:1.525?1.548 β:1.551-1.585 γ:1.554-1.587?? 複屈折量:-0.018?0.038?? 多色性:三色性?? 蛍光性:長波・短波共に変化なし? 産地:アメリカ、カナダ、ブラジル、ドイツ、スウェーデン、ロシア・・・等
マイカの一種で、リチウムを多量に含むリチウム・ペグマタイトの中で産出するのがピンク・レピドライトである。多くはピンク・トルマリンなどのLi鉱物と共存する。白雲母(Muscovite)がマンガンを含むと紫色になり、レピドライトのような色を帯びる場合もある。 ギリシャ語のLepidos(鱗状)に因んで命名された。

64) Remondite レモンダイト:カナダ産 1.391ct 帯オレンジ黄色透明石

化学組成:Na(La,Ce,Ca,Na,Sr)(CO)単斜晶系に属する。? 産状:擬六方柱状結晶?? 色相:明るい帯オレンジ黄色?帯赤オレンジ? 光沢:ガラス光沢?? モース硬度:3?? へき開:なし? ?比重:3.5? 屈折率:α=1.615 β=1.619 γ=1.622?? 複屈折量:-0.007?? 多色性:三色性?? 蛍光性:長波・短波共に微赤色蛍光?? 産地:ロシア、カナダ・・・等?????
ごく稀産な石であり、黄色からオレンジ色にかすかに色変わりするが、隣色のためカラーチェンジタイプだとは認めがたい。Laの含有率が多いと黄色みを帯び、Ceの含有率が多いと赤みを帯びる。アルカリペグマタイトの中にビリオマイトなどと関連して産する。

65) Stolzite ストルザイト:フランス産 1.952ct 黄色半透明石

和名:鉛重石 化学組成:PbWO正方晶系に属する。産状:両錐体、厚い板状結晶色相:黄色?赤色、褐色、緑色の透明から半透明光沢:樹脂光沢?ダイアモンド光沢 モース硬度:2.5-3 へき開:なし?? 比重:7.9-8.34
屈折率:ε=2.18 ω=2.27 複屈折量:-0.08 多色性:二色性 蛍光性:長波にて黄濁色蛍光、短波にて一部白濁蛍光 産地:アメリカ、ブラジル、イギリス、イタリアのサルディニア島、ドイツ・・・等
タングステン酸塩鉱物として褐鉄鉱などを伴って産出する。単斜鉛重石(ラスパイト)とは同質異像である。ボヘミアの鉱物学者J.A.Stolz に因んで名付けられた。

テキスト ボックス: 上段左から<br>  Hornblende、Kovdorskite、Lepidolite<br>  下段左から<br>  Remondite、Stolzite<br>