アフターコロナのジュエリーの洗浄・消毒について

 新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言が各地で解除されていく中、宝飾業界にも再開の動きが見られます。その中で新しい小売業の販売の形として感染防御の取り組みについてお問い合わせを頂く事が多くなりました。当研究所はウィルスについては素人であり、公表されている情報を基に我々がやりやすい消毒方法について考えてみました。

1,ジュエリーショップにおけるウィルス感染の危険性:地金についたウィルスは2~3日感染力を維持する
 厳しい条件を考えれば、対面販売やネット販売に関わらず、身につけるジュエリーにはウィルス感染の危険性が伴ってしまうようです。それは食品や衛生用品などよりは安全なものですが、単純に考えて地金などの金属の表面では2~3日ウィルスは生存するそうです。
【解説】 新型コロナウイルス、表面でどれくらい生きられる? BBC Japanより
ジュエリー販売における重要点を引用させていただくと、次のような事が挙げられます。
・金属やガラス、プラスチックの上で最長9日間生きられる(寒く湿度の低い環境)
(The Journal of hospital infection)
・プラスチックやステンレスの表面では2~3日間生存する
(ZME Science)
・せきの飛まつで空中拡散した新型ウイルスは、最長で3時間生存できる
(The preprint server for health sciences)
 このように殺菌作用がある銅や銀ならウィルスはある程度で不活性化するようですが、反応性が低い金はプラスチックやステンレスに近く、最低でも2-3日ながければ9日ほど残ってしまうことが考えられます。これは販売者の感染を考慮すれば対面販売だけでなく通販でも発送前に対策が必要なレベルとなります。

2,ショップでのジュエリーの消毒方法としてより厳格な美容院法を考える
 ご紹介したように身につけるジュエリーに付着したウィルスは、新型コロナウィルスの場合最長9日感染力を維持するため、お客様や販売員が試着したものは念の為消毒することが望ましいです。その方法について考えてみます。
 上記のBBC Japanの記事ではウィルスの消毒についても次のように述べられています。「ウィルスを消毒するためには、62~71%のアルコールや過酸化水素0.5%が含まれる漂白剤、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムが含まれる家庭用漂白剤で表面を消毒すれば、コロナウイルスは1分以内に不活性化する。」
(The Journal of hospital infection)

 日本では人にふれることから各種感染の恐れがある理容、美容の消毒について記載された法律があります。この理容師法施行規則及び美容師法に規定されている方法は、先のコロナウィルスについての方法よりもかなり厳しく、また多様な消毒方法が紹介されています。たとえば、紫外線を用いた消毒、蒸し器による蒸気消毒などですが、これらも同様に効果が期待でき、ジュエリーの消毒についても応用出来そうです。
(公益財団法人全国生活衛生営業指導センター)

3,ショップで行う消毒の方法としては、これまでどおりの超音波洗浄機でOK!?
 これらの理容美容の消毒方法をジュエリーに当てはめてみますと、導入しやすい方法としては、中性洗剤を使った超音波洗浄機での洗浄を中心に対策することと思います。その理由は現在導入されている機材がほぼ使えること、宝石に影響を与える影響が少ないことです。
 機材の導入については、超音波洗浄機はジュエリーに関わる多くの業種で使われており、改めてなにか特別な機材を購入することもなければ、紫外線殺菌機のように買おうと思っても今では売り切れ、ということもないでしょう。
 次に宝石に与える影響についてです。温泉施設のクシなどにも使われている紫外線殺菌装置は入れておくだけで雑菌、ウィルスのDNAを破壊し不活性化できる装置です。しかし、困ったことに地金の裏側に届かないことや宝石の色に影響を与えてしまう可能性があります。影響するのはカラーセンターによる発色で、例えばアメシストやクンツァイトは退色するものもあります。また、ピンク・サファイアでは中にはオレンジ色がついてパパラチア・サファイアの色になるものもあります。(サファイアの色は数日~数週間で元に戻ります)このように、紫外線殺菌装置は避けたほうが良いものもあります。

紫外線(殺菌灯6W)を20分照射したもの

 他にもアルコールを用いた消毒も有効です。特にジュエリーのような小さなものですと、アルコールで満たした液の中に浸して消毒すれば立体的で細かいところまで拭き取ることができないデザインでも消毒ができます。しかし、アルコールが影響する宝石も残念ながらあります。オイルが含浸された宝石や樹脂加工された宝石などがそうで、特にオイルが含浸されたエメラルドなどではオイルがいくらか取れて、フラクチャーが目立つようになってしまうこともあり、そのような宝石の場合には注意が必要です。
 また、オキシドールに浸ける方法も有効ですが、真珠にはその前処理の漂白に使われているように真珠には避けたほうがいいと思われます。また、ハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムも多くのものに使えますが、真珠などにはオキシドール同様漂白の恐れがあり、避けたほうように思われます。
 その一方で、そもそも手洗いがウィルス対策で推奨されているように、石鹸に含まれる界面活性剤はリン脂質でできたウィルスの細胞膜に吸着、破壊することでウィルスを死滅させたり、細胞膜の機能を不活性化させることができます。(花王 医療関係者向けページ)よくジュエリーショップで行われている中性洗剤(台所用合成洗剤として濃度0.5%以上)を溶かした超音波洗浄機での洗浄にはウィルスに対しての殺菌、消毒効果があるそうです。
 このようにすでにご利用されていて、使い慣れている超音波洗浄機を用いて洗浄することや、小さいものについてはアルコールに浸けることは十分ジュエリーや宝石の洗浄、消毒に有効な方法と考えます。
 あまりに影響の大きい新型コロナに向き合うとなにか特別なことをしなくてはいけないようにも思いますが、そもそもジュエリーは他の消費財とは異なる、特別なケアをしてきました。例えばこれまでお客様が試着した服を洗濯していたブティックがあったでしょうか。でもジュエリーショップはこれまでも宝石や地金の輝きのため、洗浄機を使ってきました。紫外線消毒機などなにか新しいことをしたいのもわかりますが、それほど特別なことは必要ないようです。アフターコロナのジュエリーの消毒についてお考えの方は、ぜひご検討ください。

2020/6/12 追記 逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)についての記載に間違いがあり、削除いたしました。ウィルスに対しては逆性石鹸より中性洗剤の方がよいようです。申し訳ありませんでした。もっと今まで通りのやり方でよかったようです。

2020/6/16追記 新型コロナについて参考にさせていただいたわかりやすい解説

THE REAL TRUTH ABOUT CORONAVIRUS
by Dr. Steven Gundry
・新型コロナは普通の風邪となにが違い、なぜ特別なのか、解説されていますが、英語でした。

東アジアで死亡率が低い背景に「SARS-X」?まとめサイト
国内陽性者IgM抗体の反応鈍く、東大先端研・児玉氏らが研究
by 小川洋輔(m3.com編集部)
・BCGのおかげではなく、なぜ日本は欧米諸国に比べ、感染を抑えられているのか、解説されています。

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