月別: 2006年8月

最近入手した宝石 ― その15

71) Painite ペイナイト ミャンマー産 1.163ct 暗赤色透明石

和名:ペイナイト(ペイン石)化学組成:CaZrBAl9O18 六方晶系に属する。
産状:卓状結晶 色相:暗赤色、橙赤色、透明石 光沢:ガラス光沢
モース硬度:7.5-8 比重:4.01  屈折率:ω=1.816 ε=1.787
複屈折量:-0.029 多色性:二色性強 蛍光:長波・短波共に赤色
産地:ミヤンマー

この石は、1952年にミャンマーのモーゴクの宝石鉱物を含む漂砂鉱床の中から最初に発見された。1957年に新種の鉱物であることがわかり発見者であるイギリスの宝石商のA.C.D.Pain氏に因んで命名された。知られている原石としてはイギリスの大英博物館が所蔵する1.7Kgの原石があり、世界唯一のものでカット石は大変稀少である。色は濃いレッド・ガーネットに似ている。

72) Sellaite セラアイト ブラジル産 0.398ct 無色透明石

和名:セラアイト(セラ石) 化学組成:MgF2 正方晶系に属する。産状:柱状結晶、繊維状集合体 色相:無色、白色、透明石 光沢:ガラス光沢 モース硬度:5 ヘキ開:{010}、{110}完全 比重:3.15 屈折率:ω=1.378 ε=1.390 複屈折量:+0.012 蛍光:長波にて紫色短波にて変化なし 産地:ドイツ、イタリア、フランス、ブラジル・・・等

マグネシウムを含んだ弗化物である。中に入っているインクルージョンの影響で黄色味を帯びているように見える。氷河期の堆積物の中に流黄、蛍石、石英等と共存、カリ岩塩鉱床、石灰岩、火山噴出物などの中から産出する。又大理石の空洞中より5cmまでの微細結晶としても産出。イタリアの鉱物学者Q.Sellaに因んで命名された。

73) Thorianite トリアナイト アメリカ産 0.299ct 黒色不透明石

和名:トリアン石(方トリウム石) 化学組成:ThO2 等軸晶系に属する。産状:立方体結晶 色相:褐黄色、黄色、緑色、褐黒色?暗褐色、透明から不透明石光沢:ガラス、樹脂光沢 モース硬度:6.5-7 ヘキ開:{001}弱
比重:9.99 屈折率:α=2.39 β=2.42 γ=2.52 複屈折量:+0.13 
蛍光性:長波短波共に変化なし 産地:アメリカ、カナダ、南アフリカ、スリランカ、マダガスカル・・等

放射線元素であるトリウムが主な成分であり、放射能を発している。ペグマタイト中とカーボナタイトの中から産出する。閃ウラン鉱よりも稀少であり、閃ウラン鉱のウラニウムがトリウムによって置換されウラニウムよりトリウムの含有が多いものをトリアナイトと呼び、セリウムが多いものはセリアナイトとよぶ。中間的な化学組成を持つ物(Uranothorianite)も多い。

74) Willemite ウィレマイト アメリカ産 0.222ct 黄色透明石


和名:珪酸亜鉛鉱 化学組成:Zn2SiO4 三方晶系に属する。
産状:塊状、粒状、時に柱状結晶 色相:無色、緑色、黄色、白色、褐色、赤色、透明から半透明石 光沢:ガラス光沢から樹脂光沢 
モース硬度:5.5 ヘキ開:一方向に明瞭 比重:3.89-4.10
屈折率:ω=1.719 ε=1.691複屈折量:+0.028 多色性:二色性 
蛍光:長波・短波共に黄色 分光:421nmに強いライン、583,540,490nmに弱いライン産地:アメリカ、カナダ、メキシコ、ロシア、ナミビア・・・等

名の通り、亜鉛と珪酸からなる鉱物である。市場に出回っている透明石はアメリカのニュージャージー州のフランクリン鉱山からの物がほとんどで1?2ctのサイズが多い。日本でも採れるが、ごく小さいものしか採れない。紫外線をあてると強烈な黄緑色の蛍光を発する。Mnを含有する場合には黄色の蛍光を発する(成分分析の結果Mnの含有が確認された)。蛍光灯には合成珪酸亜鉛鉱などが蛍光物質として使われている。名称はオランダの王ウィレム一世に因んで命名された。

75) Williamsite ウィリアムサイト アメリカ産 0.228ct 緑色透明石


和名:ウィリアムサイト 化学組成:(Mg,Fe)3Si2O5(OH)4 単斜晶系に属する。産状:塊状、繊維状 色相:緑色透明石 光沢:樹脂光沢 
モース硬度:4 ヘキ開:時に明瞭 比重:2.4-2.8 屈折率:1.560-1.571 蛍光:長波にて微緑色 短波にて変化なし 産地:アメリカ・・・等

蛇紋岩(Serpentine)の一種である。蛇紋岩にはウィリアムサイト、ボーウェナイト、リコナイト等の多くの宝石になる変種がある。ヒスイに似ている緑色を示し、中には内包物として黒色のクロマイト・インクルージョンが混在している。             

 

上段左から
Willemite, Williamsite

下段左から
Painite, Sellaite, Thorianite

 

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Categories: 6.レアーストーン紹介

ジェム・インフォメーション 第33・34合併号発行 2006年8月28日

目次

(1)アメリカコロラド州スイートホーム鉱山産透明ロードクロサイト
    1)ロードクロサイト(Rhodochrosite)とは…
    2)コロラド州スイートホーム(Sweet Home)鉱山の歴史と品質
    3)スイートホーム鉱山の場所と地形
    4)新しい採掘方法とカット技術の進歩
    5)類似石と類質同像
    6)ロードクロサイトの市場と取り扱い方法

(2)A.G.LがGIAのカットグレーディングシステム導入
    1)GIAカットグレーディングシステムに於ける品質の3要素
    2)数値化によって表示される検査項目
    3)目視評価項目
    4)ペインティングとディギングアウト
    5) A.G.Lと GIAのカットグレーディングシステムの比較
    6)ハート&キューピットとクロマティックフレア

(3)コロンビア・チボール鉱山産 ユークレース(Euclase)

(4)コロンビア産の珍しいコランダム

(5)ノルウェー産ペリドット(Peridot)

(6)ブラジル産出の宝石ブラジリアナイト(Brazillianite)について

(7)トルコ石(Turquoise)の加工方法について

(8)パライバ色をしたギラライト入りクォーツ

宝石の世界 “ロードクロサイト”

ロ ー ド ク ロ サ イ ト   Rhodochrosite  “新しい宝石文化の誕生” アメリカ コロラド州スイートホーム鉱山産 透明ロードクロサイト   1) ロードクロサイト(Rhodochrosite)とは・・・    2) コロラド州スイートホーム(Sweet Home)鉱山の歴史と品質  3) スイートホーム鉱山の場所と地形    4) 新しい採掘方法とカット技術の進歩    5) 類似石と類質同像  6) ロードクロサイトの市場と取り扱い方法  7) 種々の分析データ 

 濃淡のピンク色に白い縞の入ったベーコンの様な外観から、ベーコンストリップとも呼ばれる縞目を持つロードクロサイトは、一般的には不透明な塊状の宝石で、彫刻品や置物などにインカローズ(inca-rose)と呼ばれて長い間使用されてきた。そのうちごく一部の良質なものは丸球等に加工され、ネックレスなどの装身具として欧米では利用されている。 和名で菱マンガン鉱と呼ばれるように、菱面体形状を示す美しい結晶形として産出する透明石が、年に数える程ではあるが発見されてきた。ロードクロサイトはモース硬度が3.5?4とほとんどの宝石より低いが(例 / オパール:モース硬度5.5?6.5)、ジュエリーとしてずっと使用されている真珠(モース硬度:2.5?4.5)よりも硬度が高い点に着目して、新しい技術で採掘され、新しい技術で磨かれ、ここに初めてエッジがシャープな新しい宝石として誕生した。            アメリカコロラド州の4000m以上の高地で、鉱山に入れるのは年に数ヶ月だけという厳しい地形にもかかわらずスイートホーム(Sweet Home)鉱山がアメリカ人によって採掘され、今日本に輸入され始めている。 スイートホーム鉱山の場所と地形 スイートホーム鉱山はコロラド州アルマの北西約6kmの険しいモスキート山脈に位置し、デンバーから南西に128kmの所にある。北はブロス山の中腹にある銀鉱山、南は金の鉱山という2つの主要な採掘地区の中間に存在する。スイートホーム周辺の地形は険しく、高さが4,267mもある山頂が幾つか鉱山を囲んでいて、冬には6m近い豪雪に見舞われ、鉱山に行けるのは1年に2?3カ月しかないという。採掘は通常、雪がなくなる5月下旬頃から開始され、実際に雪がなくなるのは、7月半ばから8月半ばだけだという。 新しい採掘方法とカット技術の進歩 4000m以上の高地で、先カンブリア紀の花崗岩や花崗岩質片麻岩の大変硬い母岩の中に、モース硬度3.5?4と非常に柔らかく、さらに3方向に完全なクリベージを持つロードクロサイトの結晶が入っているために、どのようにそれらを見つけ出し、破壊することなく美しく取り出すかという難題をクリアするためにスイートホーム・ロード社の地質学者達による広範囲な地質地図の作成と調査が行われた。その結果、主要なロードクロサイトの鉱脈が“通常北東にのびる主要な鉱石鉱脈が、断層系と交差する場所に生じる”という理論が成立した。数年後、これらの場所がロードクロサイトのポケットであることが判明した。今までのロードクロサイトの採掘方法や、他の宝石の一般的な採掘方法は、鉱脈近くにドリルで穴を開け、そこにダイナマイトを入れて爆破し、破壊した母岩の中から結晶系を探しだす為、爆破の時点で結晶が割れたり崩れたりしてしまい、完全なものや大きなものは採掘できなかった。 又カット方法も今までの方法では原石のクリーニングに時間をかけず、ただ周囲に付いたほこりや小さな粉末を水で洗い流すだけで、研磨版の材料、研磨の速度、研磨材、ポリシング材…などの研究もさほどなされなかった。 しかし、このグループは硬度の低いロードクロサイトの結晶を取り出すために、チェーンソーを用いて周囲の母岩ごと掘り出すことに成功した。取り出された結晶は5時間ないし10時間のクリーニングを徹底的に行った。粉塵がわずかについているだけで、研磨の際にキズをつけたり、しいては割れにもつながってしまうからである。さらに研磨板の回転速度、摩擦熱を上げないための研究、トップに石をつける接着剤の研究がなされ、徹底した研磨室のクリーン化がはかられた。採掘、研磨の工程で様々な改善がなされたことで、ここのSweet Home鉱山産のロードクロサイトにカット面のエッジがカミソリの刃のようなシャープな宝石が完成したのである。 1992年以降、0.5ct以上の大粒のカット石は、年間100個程度しか生産されていないという数字を見ても、世界中のディーラーの取り合いは必至で、日本に入ってくる数に限りがあることは容易に想像がつく。