宝石の世界 “ロードクロサイト”

ロ ー ド ク ロ サ イ ト   Rhodochrosite  “新しい宝石文化の誕生” アメリカ コロラド州スイートホーム鉱山産 透明ロードクロサイト   1) ロードクロサイト(Rhodochrosite)とは・・・    2) コロラド州スイートホーム(Sweet Home)鉱山の歴史と品質  3) スイートホーム鉱山の場所と地形    4) 新しい採掘方法とカット技術の進歩    5) 類似石と類質同像  6) ロードクロサイトの市場と取り扱い方法  7) 種々の分析データ 

 濃淡のピンク色に白い縞の入ったベーコンの様な外観から、ベーコンストリップとも呼ばれる縞目を持つロードクロサイトは、一般的には不透明な塊状の宝石で、彫刻品や置物などにインカローズ(inca-rose)と呼ばれて長い間使用されてきた。そのうちごく一部の良質なものは丸球等に加工され、ネックレスなどの装身具として欧米では利用されている。 和名で菱マンガン鉱と呼ばれるように、菱面体形状を示す美しい結晶形として産出する透明石が、年に数える程ではあるが発見されてきた。ロードクロサイトはモース硬度が3.5?4とほとんどの宝石より低いが(例 / オパール:モース硬度5.5?6.5)、ジュエリーとしてずっと使用されている真珠(モース硬度:2.5?4.5)よりも硬度が高い点に着目して、新しい技術で採掘され、新しい技術で磨かれ、ここに初めてエッジがシャープな新しい宝石として誕生した。            アメリカコロラド州の4000m以上の高地で、鉱山に入れるのは年に数ヶ月だけという厳しい地形にもかかわらずスイートホーム(Sweet Home)鉱山がアメリカ人によって採掘され、今日本に輸入され始めている。 スイートホーム鉱山の場所と地形 スイートホーム鉱山はコロラド州アルマの北西約6kmの険しいモスキート山脈に位置し、デンバーから南西に128kmの所にある。北はブロス山の中腹にある銀鉱山、南は金の鉱山という2つの主要な採掘地区の中間に存在する。スイートホーム周辺の地形は険しく、高さが4,267mもある山頂が幾つか鉱山を囲んでいて、冬には6m近い豪雪に見舞われ、鉱山に行けるのは1年に2?3カ月しかないという。採掘は通常、雪がなくなる5月下旬頃から開始され、実際に雪がなくなるのは、7月半ばから8月半ばだけだという。 新しい採掘方法とカット技術の進歩 4000m以上の高地で、先カンブリア紀の花崗岩や花崗岩質片麻岩の大変硬い母岩の中に、モース硬度3.5?4と非常に柔らかく、さらに3方向に完全なクリベージを持つロードクロサイトの結晶が入っているために、どのようにそれらを見つけ出し、破壊することなく美しく取り出すかという難題をクリアするためにスイートホーム・ロード社の地質学者達による広範囲な地質地図の作成と調査が行われた。その結果、主要なロードクロサイトの鉱脈が“通常北東にのびる主要な鉱石鉱脈が、断層系と交差する場所に生じる”という理論が成立した。数年後、これらの場所がロードクロサイトのポケットであることが判明した。今までのロードクロサイトの採掘方法や、他の宝石の一般的な採掘方法は、鉱脈近くにドリルで穴を開け、そこにダイナマイトを入れて爆破し、破壊した母岩の中から結晶系を探しだす為、爆破の時点で結晶が割れたり崩れたりしてしまい、完全なものや大きなものは採掘できなかった。 又カット方法も今までの方法では原石のクリーニングに時間をかけず、ただ周囲に付いたほこりや小さな粉末を水で洗い流すだけで、研磨版の材料、研磨の速度、研磨材、ポリシング材…などの研究もさほどなされなかった。 しかし、このグループは硬度の低いロードクロサイトの結晶を取り出すために、チェーンソーを用いて周囲の母岩ごと掘り出すことに成功した。取り出された結晶は5時間ないし10時間のクリーニングを徹底的に行った。粉塵がわずかについているだけで、研磨の際にキズをつけたり、しいては割れにもつながってしまうからである。さらに研磨板の回転速度、摩擦熱を上げないための研究、トップに石をつける接着剤の研究がなされ、徹底した研磨室のクリーン化がはかられた。採掘、研磨の工程で様々な改善がなされたことで、ここのSweet Home鉱山産のロードクロサイトにカット面のエッジがカミソリの刃のようなシャープな宝石が完成したのである。 1992年以降、0.5ct以上の大粒のカット石は、年間100個程度しか生産されていないという数字を見ても、世界中のディーラーの取り合いは必至で、日本に入ってくる数に限りがあることは容易に想像がつく。

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