ブラック・モアッサナイトで気をつけるべき三つの事柄

最近、メレーサイズの合成ブラック・モアッサナイト(以降:すべて合成)がブラック・ダイアモンド(加熱処理含む)の模造石として問題になっている。大手チェーン店は在庫の全てをチェックするよう、納入業者に全て一度返品したという話まである。当研究所にも問い合わせが相次いでいるので、その特徴と状況について述べる。

ブラック・モアッサナイトの特徴と鑑別方法

ブラック・モアッサナイトは、2000年頃問題になったダイアモンドの類似石、合成モアッサナイトの黒い物である。モアッサナイトは熱伝導率を用いたダイアモンドテスターで、ダイアモンドと同じ反応が出てしまうことで話題になった。しかし、キュービックジルコニアなどに比べ価格が高く、また、複屈折量が多いため、無色石ではダブリングがはっきりと見え、鑑別が容易なことからあまり市場では見られなくなっていた。
また、モアッサナイトは研磨剤として用いられるグリーン・カーボランダム(シリコン・カーバイド)と呼ばれるものと同じもので、今回のブラック・モアッサナイトは、グリーン・カーボランダムが濃緑色不透明多結晶石であったのに対し、その結晶が大きくなったものではないかと思われる。また、その色は黒く見えるが、濃い緑青である。
通常の機材でも分かる鑑別上の特徴としては、表面の深い傷である。下の写真でも深い直線のスクラッチと、研磨の際に付いたと思われる円形のスクラッチ(9時?12時の方向)が見られる。これは多結晶とまではいかないが、結晶が均一でないことであることに由来すると思われる。
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また、すべてのブラック・モアッサナイトに含まれる訳ではないが、強い光を当てると内部に、曲線状に連なった気泡が見えることがある。
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今回、メレーということで小さい石がたくさんついた商品が多いことから、上記のような顕微鏡による検査が実務上最も有効であると考えている。また、確認用に成分分析機を用いることもある。なお、電導性を調べるモアッサナイトテスターでは多くのブラック・ダイアモンドも電導性があるため、ともにモアッサナイトの反応が出てしまうので、注意が必要である。

ブラック・モアッサナイト 他のダイアモンド類似石の状況

さて、当研究所にはブラック・モアッサナイトは2008年1月に最初に持ち込まれた。香港の業者から購入したというブラック・ダイアモンドのメレーを用いたジュエリーの一部に使われていたものであった。そして、5月頃には国内のルースの大きなロットがまるまるブラック・モアッサナイトであることが発見され、驚かれた。しかし、ルースについては重液やレントゲンでの検査が可能で、その後は見つかっていない。
ブラック・ダイアモンドとしての鑑別依頼は引き続き、当研究所に持ち込まれている。その中で実際ブラック・ダイアモンド以外の類似石(キュービックジルコニア、スピネル、サファイア、カルセドニー)などが、100石ほどメレーが付いたジュエリーで、一つでも発見される割合は5%ほどであり、そのうちの1/5つまり、全体の1%程からブラック・モアッサナイトが発見されている。
ブラック・モアッサナイトが発見されるのは、香港、中国で製造・販売された商品に多く、国内で製造されたものには、ごく少ない数しか見つかっていない。これは調べる対象によって異なるであろうが、当研究所においてはこういう状況である。
つまり、ブラック・モアッサナイトがブラック・ダイアモンドに混入していることは驚異であるが、それ以外の類似石が混入していることが遙かに多いということである。

今般、サブプライムローンの破綻に起因して世界の株価が乱降下している。しかし、サブプライムの問題自体が日本経済には実際それほどの影響があったわけではない。(ご参考:財部誠一の「ビジネス立体思考」) モアッサナイトも同様なのかもしれない。

ブラック・モアッサナイトを含む、ブラック・ダイアモンドの類似石については、顕微鏡などの簡易な機材だけで行える他の類似石との識別方法として、次のGem Informationで解説する予定であるので、詳しくはそちらをご参考にしていただきたい。

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