日独宝石研究所 2026年 年賀状のご説明

輝かしい年頭にあたり 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
昨年も格別のご用命を賜り厚く御礼申し上げます。
皆様のますますのご発展を祈念しますとともに、
本年もなお一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

令和8年 元旦 日独宝石研究所 所員一同

年賀状に用いました写真のご説明をさせていただきます。

こちらは、コロンビア産のエメラルドに見られた、螺旋状の成長線です。この螺旋の軸は結晶の成長方向に一致しており、その形成は結晶成長の過程に起因しています。もともとは何らかの固体包有物が成長の妨げとなり、そこを起点として結晶格子内に螺旋状のひずみや段差が生じたと推測されます。

同じくエメラルドですが、こちらはザンビア産のものでデンドリティックのインクルージョンが見られます。デンドリティックのインクルージョンについては、生物起源のものであるとする説が出てきており、次号のGem Informationでご紹介できればと考えています。

他にも昨年拝見したもので、パキスタン産のエメラルドにはファントム構造が見られるものもございました。中央部には微小の液体インクルージョンが集まっています。

ダイアモンドの原石に見られたトライゴンですが、非常にきれいに整った三角形の成長構造が見られます。(撮影:原和佳子)

ゴールド・シーンと呼ばれる、金色のシーン効果を持つサファイアに見られるインクルージョンです。インクルージョンは鉄の鉱物で、ヘマタイトやイルメナイトと言われています。光が当たると金色に輝く様子が見られます。

こちらはパキスタンのベリルを、偏光フィルターを通して撮影したものです。一般的なアクアマリンとは比較にならないほど濃い青で、アクアマリンと違う色のメカニズムがあるかと思われましたが、単純に色の原因となる鉄が大量に含まれたものでした。

マダガスカル産のスピネルに見られる、雪花状のインクルージョンです。このようなインクルージョンはベトナムのものの特徴と考えられていましたが、近年マダガスカルのものにも見られることが報告されました。

昨年弊社では新しいラマン分光を導入いたしました。それによりこれまでは特定できなかったインクルージョンでも特定できるものが増えました。こちらは、水晶中のパイロフィライト(Pyropylite)で、薄い結晶が連なってねずみ花火のように伸びている様子がとても興味深いです。それだけでは崩れてしまう鉱物ですが、水晶のインクルージョンとして閉じ込められることでその美しさを保つことができたものです。

こちらもインクルージョンとして珍しいもので、アレキサンドライトに見られたフルオライトです。ピラミッドを2つ重ねたような、八面体のきれいな形が見られます。

こちらはベリル中のコロンバイト(Columbite)です。ニオブやタンタルなどのレアメタルから成る鉱物で、ベリル同様にペグマタイトで生まれます。

こちらはトパーズ内に見られた、アンアイト(Annite)で雲母の一種です。雲母らしく薄い結晶が重なっている様子が見られ、墓決勝の間に僅かにできた隙間が干渉を産んでいて、七色の光が黒い結晶に映えています。

昨年はベトナムLuc Yenのルビー、スピネル鉱山を訪れることができました。色の淡いところが大理石でその割れ目に堆積した土砂が色の暗い層を構成していますが、この堆積層にルビー、スピネルが含まれてます。この土砂をホースの放水で崩していき、水の中で比重をもとに分けていきます。

堆積層中からは、ルビーが見つかりました。

Luc Yenでは非常にきれいなコバルト・スピネルも見ることができました。

ベトナムでは合成ダイアモンドについて、講演を行いました。合成石の誕生によってこれまでのラウンドブリリアントカットだけではない、新しいカットがダイアモンドに試されるようになったというメリットもあるとお話しました。ラウンドブリリアントカットだけでダイアモンドの可能性を終わらせたくない、と言うお話には賛同をいただけました。

昨年は国際宝石学会がギリシャであり、ブラジル産のサファイアについて発表を行いました。

Stacked from 11 images. Method=B (R=8,S=4)

コメット状のインクルージョンが特徴的でした。

パルテノン神殿の大理石は、青い空とのコントラストが美しかったです。石畳は昔からのもので、古代ギリシア人が同じ道を歩いていたと考えると感慨深いものでした。(足元ばかり見るほど登り坂でもありました)

これらはCVDダイアモンドの歪みから生じる滲んだファイアです。CVDは積層して作られるため、その層の間に僅かな歪みが生じ、ファイアのようにかすかな光の分散で生じる虹色の模様においては、その僅かな結晶の歪みでも見え方が変わり、このようなにじみとして見られます。ただ、最近のCVDでは品質が良くなり、大きなものでもあまり見られなくなってきました。

コロンビア産のエメラルドの蛍光で、わずかに青白く光っている部分はオイルによるものです。透明度の改善には寄与しない範囲のオイルと考えられます。

ベリリウム加熱されたサファイアに見られた偏光像です。こちらはオーバーグロースのようにベリリウムを多く含む層が形成されていたため、母結晶とは異なるパッチ状の偏光像が見られたものと考えられます。ベリリウムを用いた加熱も様々な形式が試されていると感じますが、キャッチアップし続けたいと思います。

こちらはカナダ、ジェフリー鉱山のグロッシュラーガーネットに見られた偏光像です。偏光像は年輪のように結晶の成長の痕跡を示してくれます。

ガーネットつながりで、最後は非加熱のロシア産のデマントイド・ガーネットのホーステールインクルージョンです。このようなインクルージョンがあるとわかりやすいです。

JGGL Logo

昨年は弊社のロゴを新しくすることができました。幸いにお客様からはご好評をいただいております。
本年はより一層、研究を深め、サービス向上に努めてまいります。
Gem Informationも発行しなければいけません。
Solo Leveling ならぬ Co-Levelingを目指す一年としていきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

日独宝石研究所 所員一同 令和8年元旦

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