月別: 2010年6月

ドイツ、アイフェル地方メンディヒのアウイン鉱山訪問

ハウインは、サファイアよりも美しい青さを持った宝石とも言われ、
レアストーンのコレクターに大変人気があります。
しかし、その硬度は5-6と宝石としては傷つきやすいものです。
また、溶岩の空隙に生成するその産状から、カット石で
1ctを超えるような大きな石は極めて珍しいものです。

今回、5月にドイツ、コブレンツ市にお住まいのハウインのコレクター、
Mr. Eckhard Mücke(エクハード・ミュケ氏)を訪問し、 予想もしていなかったことに、
ハウインの鉱山にまでお連れ頂いたのでそのご報告をします。

ミュケさんはコブレンツで最も美しい、ライン川とモーゼル川の合流地点
であるドイチェスエックDeutsches Eck(ドイツの角の意味)
の側の古い街並みが続くマーケットの近くにお住まいでした。
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ご自宅の隣の大きなもみの木(?)から聞こえる
鳥たちのさえずりが都会の中のオアシスのようで印象的でした。

ミュケさんにお会いすると、日本からの訪問を大変喜んでくれました。
ミュケさんは現在精神科医のお仕事をされているようですが、
本人のご趣味でアウインのコレクションをされています。
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早速ミュケさんのコレクションを拝見したのですが、
きれいなアウインをあんなにたくさん見たのは初めてというくらい、
とてもきれいにソーティングされていて、驚きました。
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しかし、当然これらはやはり珍しいものなんです、と
見せて頂いたたくさんのカットされない原石を前に、
その貴重なコレクションを惜しげなく見せて
いただいたことを、とてもうれしく思いました。

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そして、急に鉱山へ行く話になりました。私はまさか、鉱山まで
行けるとは思っておらず、再度びっくりしてしまいました。
またミュケさんは、せっかくですから、少しだけコブレンツの
ドイチェスエックを見ていっては、とライン川右岸の崖の上に立つ、
Festung Ehrenbreitstein の古城跡(砦跡?)に連れて行ってもらい、
その風景を楽しみ、河辺のレストランでアイフェル鉱山へのはやる気持ちを抑えつつも、
ライン川の風景を楽しみながら、お昼を急いで頂きました。
コブレンツは川の流れのように、緩やかで美しい街でした。

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さて、鉱山へは高速道路を含め、車で20分ほどの距離でした。
Mendig市の近くで高速を下りると、一面の黄色の菜の花畑が
広がっていました。そして黄色の絨毯のような菜の花畑の
間を進んでいくと、灰色の丘のような、軽石(Bims)の採石場が
広がっていました。そこがアウインの採掘場だったのです。

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軽石はブロックやコンクリートなど建材に用いられるようですが、
山側に広がる採石場で、柔らかな地盤を崩して採掘されるそうです。
その大きな砂山を前に、ここは粗く粉砕された土砂ですが、
ここからもほどほどの大きさのアウインが見つかるんですよと、
説明して頂きました。特に雨が降って濡れるとアウインに
付着した泥が落ち、暗い灰色の土砂の中、鮮やかな
アウインが見つかるということでした。
ただ、その日は前日の雨も乾ききっていて、
この砂山からは一つも見つかりませんでした。
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また、一般にアウインは採石場でもいくつかの場所で露出した、
小石が集まる堆積層から産出するそうで、まず
少し前まで掘っていたという穴を見に行きました。
小砂利が10cmほど溜まった層があり、その場で
すこし掘ってみましたが、そこからもアウインを
見つけることは出来ませんでした。

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また、そこから現在崩している採石場の様子が見え、
そちらに移動しました。

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移動の途中で、ミュケさんにアウインの採取方法を
教えてくれたという、Mr. Norbert Müllerとお会いしました。
(ノルベルト=ミュラー氏、写真で白い顎鬚の方)
ミュラーさんは日本から来たというと、大変喜んでくれ、
最近採取した原石や、3.37ctもある大きなカット石を
見せてくれました。

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最近採掘している場所への道すがらでも
アウインの小さいのがあると、いくつか拾って見せてくれました。
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現在山肌を崩し、軽石の元となる鉱石を採掘している現場
に着くと、写真のような若干暗くなっている、
小さな砂利が多く含まれる層を示し、この小石の中に
アウインも溜まっていると教えてくれました。

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ハウインという希少な宝石が、ドイツという宝石の産地としてはそれほど
メジャーではない国の、都会からもすぐ近くの行きやすい鉱山から産出し、
さらに、その採掘も軽石鉱山の副産物として、大がかりなものではなく、
コレクターの方が趣味として行っている様子には、本当驚きました。

ミャンマーやスマダガスカルのような宝石産出国は、交通の便や治安も悪く、
行きづらい所であり、その採掘も大規模の鉱山主が管理しているような印象がありました。
宝石はそれくらい大きな土地(人が住んでおらず掘り返せる土地)
で大がかりに採掘しないとまとまった生産が得られないほど
少ないものですから、それもしかたのないことですが、このハウイン鉱山
のような鉱山が我々の近くにもあれば、宝石はもっと身近なものに
なったかもしれませんね。

また、今回の訪問ではひとつ大きな失敗がありました。
ドイツ出張時のミュケさんの写真などのデータの入った
デジタルカメラをレンタカーに忘れてしまったのです。
しかし、なんとも幸いなことに、次に乗った方が見つけてくれたのです。
ドイツも日本のように、親切な方が多いようです。
なにはともあれ、大切な写真が戻ってきて、本当によかったのです。

最後に、ミュケさんをご紹介頂いた宝石私立探偵HauyneBlueさん
改めて御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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Categories: 3.新しい宝石産地

ジェム・インフォメーション第39・40合併号 内容紹介

皆様ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より日独宝石研究所をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。この度、大変遅くなりましたが、Gem Information 第39・40合併号が発行の運びとなりました。今号から、紙面のレイアウトを大幅に変更し、文字を小さくしての発行となりました。印刷費の上昇に対応するためのものでご了承いただければと存じます。その代わりと言ってはなんですが、弊社に著作権のある画像につきましては、お客様でご利用される機会がございましたら、これまで以上にご提供させて頂きたいと考えております。

さまざまな理由から低迷する業界ではありますが、宝石の魅力を伝え、その喜びを共有していくことが業界の復興、発展に繋がるものを信じ、これからも情報発信に努めていきたいと思います。

=== 内 容 紹 介 ===

☆チベットのアンデシン鉱山と拡散加熱処理の現状image001

チベットのアンデシン鉱山を訪問する機会を得たので報告致します。
また、アンデシンの研究を進める中で、東京都産の
アンデシンを入手でき、分析致しました。
いまだ日常的に非破壊でできる手段での鑑別方法は
確立されておりませんが、拡散加熱処理がいろいろなラボで再現され、
鑑別方法についても研究が進んでいる状況です。

☆ムーンストーンやサンストーンなどの長石の分類 image003

改めてムーンストーンやサンストーンの分類についてご紹介いたします。
海外とはいまだ呼称に違いがあるところもありますので、これらの違いは、
買い付けをされる方にもぜひ知っておいていただきたいものです。

☆ブラック・ダイアモンドとその類似石image005

昨年以来、ブラック・モアッサナイトなどの類似石が問題となっております。
それを扱っている業者の方が自ら看破する方法をご紹介いたします。
なんの類似石かの特定は困難な所もありますが、
ダイアモンドではないことに気付くことは可能かと思います。
この方法でぜひご自身でチェックして頂く一助となればと思います。

☆ペルー産のブルーが美しいクリソコーラimage007

ペルー産とされるクリソコーラが見られるようになりました。
良質のものとされるアメリカ産とも思われるような透明度の高い、
美しい色でしたのでご紹介いたしますと共に、
クリソコーラという宝石について再度ご紹介したいと思います。

☆ライモナイト入りトパーズimage009

ルチルの針状インクルージョン入りとして流通している
トパーズのインクルージョンがルチルではなく、
ライモナイトという別の鉱物であることが分かりました。
生成の仕方もルチルと大きく異なるインクルージョンで、
興味深いものなのでご紹介いたします。

☆日本の宝石市場に見る変化と提言

昨今に始まったことではありませんが、宝飾業界は長く深い不況にあります。
他の業種やブランドのジュエリーと比較し、
日本の宝飾業界の変化と提言をまとめてみました。
販売店様向けのチェック項目もありますのでご活用いただければと存じます。