4)まとめ今までの加熱方法と実験結果

? 今回バンコクを訪問し、実際に自分の目で高温加熱をしている炉を見ることができ、ルツボの中から出てくる様々な色のサファイアを見て、この新しい加工技術は100トンの土砂の中からやっと数十グラム発見される原石を、最もきれいな状態で供給する宝石加工の一方法であると痛感した。

かつて宝石は、カットさえされずに使用されていた時代もあった。自然のもたらした宝物をいかに美しく使うか.・・・それは長い宝石とのかかわりの中で研究し続けられてきた。30年ほど前から行われ出した加熱加工は、どのようにして加熱温度を上げるか、どうすれば高温加熱から石を守れるか、そして石が本来持っている要素を引き出すにはどうすればよいか・・・など懸命な研究がなされ、それが時には加工業者、仕入れ業者、鑑別機関との騙しあい、探りあいでもあった。今回様々な憶測の飛び交う中で、バンコク大手の加工業者から、加工現場を包み隠さず見せていただけた事を正しく報告するのが私の責務と感じると共に、新しいベリリウムを使っての加熱方法は、まさに画期的な技術革新であったと感じずにはいられない。5年後、10年後になれば、この発見がいかにすばらしい事であるか分かるだろう。

宝石鑑別上の表記について言えば、今後さらに進んでいくであろう宝石加工技術の中で、人為的に使用される金属元素が直接石を着色する場合と、なんらかの方法で本来その石が持っている要素が引き出されている場合とで、線引きができるのではないだろうか。

外部から着色の起源となる金属元素を加えるDiffusion(表面拡散)処理や、オーバーグロース、放射線処理などがなされた石は、“処理石”のカテゴリーである。しかしベリリウムや水素を使った加熱方法は、上述の通り、本来それぞれの石が持っている色の要素を引き出すと考えられるので、同じ“処理石”のカテゴリーでくくることはできない。しかし何工程もの段階を経て、その石が持っていた美しい色が生み出されているのであるから、今までの“エンハンスメント”といった不明瞭な表現はやめて“加熱加工”が行われていることを明記すべきである。

今まで“エンハンスメント”として受け入れられていた ギューダ(Geuda)、各種コランダム、パライバ・トルマリン、タンザナイトとして人気のあるブルー・ゾイサイトもこのカテゴリーに入る。平成6年に取り決められた宝石鑑別団体協議会のルールブックには含まれていないイエロー・トルマリンも、一部の石を除いて大半が加熱されているので、これらも当てはまるだろう。記載方法が細分化されればされるほど、各鑑別機関の足並みをそろえるのは難しく、誤鑑別を招きかねない。ほとんどの天然石が加熱加工されている現在、“加熱加工”の開示をし、“色の改変が行われている”ことを明記した上で、“処理石”のカテゴリーとの区別をしてはどうだろうか。その上で、ユーザーの方々に選んでもらうべきではないか。

写真5. 山梨県工業技術センターにあるSIMSとXPSの

複合型分析機

<写真撮影;新海治子>

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