日独宝石研究所 2017年 年賀状のご説明

謹んで新年のご祝詞を申し上げます。 輝かしい年頭にあたり 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。 昨年中は格別のご用命を賜り厚く御礼申し上げます。 御社のますますのご発展を祈念しますとともに、 本年もなお一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。    平成29年 元旦 日独宝石研究所 所員一同
年賀状に用いました写真のご説明をさせていただきます。

2016年は本当たくさんの合成ダイアモンドに悩まされました。特にメレーサイズのものは市場での流通量も多く、また検査も大変でした。こちらはCVD法の合成ダイアモンドの原石の偏光像です。成長方向に縞目も見えていますが、下の種結晶の部分には虹色が見え、結晶の違いが分かります。

こちらは弊社でご紹介しているGLIS-3000で合成ダイアモンドを含むロットの燐光画像を撮影したものです。光っていないものがB4,B5,B2,E8などにありますが、これらが天然で光っているものはHPHT法の合成ダイアモンドです。

同じくGLIS-3000で撮影したCVD法の合成ダイアモンドです。左が蛍光画像、右が燐光画像です。CVD法のものは燐光を示さないものもあり、燐光、蛍光両方をチェックする必要があります。

合成が続いてしまいました。こちらはダイアモンド中のパイロープ・ガーネットのインクルージョンです。ガーネットらしい形をしていないのは、ダイアモンドの空隙にガーネットの成分が入り込んで結晶化したためと思われます。

続いてモザンビーク産のスペサルティン・ガーネットです。こちらは2016年のツーソンで初めて見たもので30~50ctの大きなサイズのものがあるのが特徴です。しかし、気をつけないとマンダリンらしいオレンジではなく、少し褐色が強いもの、写真のようなインクルージョンがさらに多くなり、透明度のも悪いものも散見されました。

2016年によく見られた紫色のロードライト・ガーネットです。アメシストのような色をしたロードライト・ガーネットで、パープル・ガーネット、グレープ・ガーネット、アマランス・ガーネット、ロイヤル・ガーネットなどの呼び名も着けられています。ガーネットはその複雑な組成からいろいろな変種が現れ、このように特徴的なものだけを集めることで新しい宝石として訴求されることもある、複雑故に自由度の高い宝石だと思います。個人的にはメレラーニ・ミントと呼ばれるグロッシュラー・ガーネットのような視点は一つ一つの宝石の個性を見て魅力を見つけ出した、素晴らしいものだと思います。

こちらはコバルトを表面拡散処理したスピネルです。コバルト・スピネルが非常に希少で、また魅力的なことから、このような処理が生まれたようです。スピネルを少し溶かしてコバルトを表層に混ぜ込むようですが、溶けた跡はこのように痛々しいものです。

Gem Information Vol.42でもご紹介したこちらは天然のコバルト・スピネルです。インクルージョンだけでも美しいものです。これはベトナム産のコバルト・スピネルで、ブライド双晶が光を干渉してこのような模様が見えています。

マダガスカルのZahamena国立公園近くで2015年9月頃新しく発見されたルビーです。少し紫が強いですが、非加熱ものもが多く見られました。

こちらはビルマ産、ピジョンブラッド・カラーのルビーに見られたもやもやした糖蜜状組織と結晶インクルージョンです。昨年もビルマのルビーに対する需要は高く、鑑別で見ることも減ってしまいましたが、その分出会えたときの感動が高まっています。2017年も美しい宝石との出会いを楽しみにしています。

同じくカシミール産サファイアのコメット(すい星)状の結晶インクルージョンです。結晶インクルージョンが入ることで、その後の結晶の成長に影響が出てこのような尾を引いたすい星のようになります。カシミール産サファイアもなかなか鑑別ではみることが出来ません。

2016年の最後には良いニュースも聞かれました。マダガスカルで新しいサファイアのラッシュが起こっているそうです。先ほどのルビーの鉱山の近く、中東部Anbatondrazaka近郊からブルー、オレンジ、イエローなどのサファイアの鉱山が見つかりました。非常に大きなものも産出しているようで各所からその興奮が伝わってきています。2017年には市場にでも出てくるでしょう。楽しみです。

今年も良い宝石に恵まれますように。

それではどうぞよろしくお願いします。

2017年元旦 日独宝石研究所 所長 古屋正貴 社員一同

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